前置き:これは、昔一度本館にてUPしましたが、2009.10.4に大幅修正したものです。
修正したものの、やはりしっくりしなくて下げました。
ゲームについては、または他の創作については本館レヴューをご覧ください。
~プロフのHPアドレスから訪問できます。(なお、あんず&恭介の話です)
~想像以上のBirthday~
「よぉ、あんず。今度の日曜日ヒマか?」
いつものように夕食目当てか家に押しかけてきた桐生恭介が
あんずの部屋に入った途端切り出した言葉がコレだった。
「え?う、うん。特に予定は入ってないけど・・・」
あんずが戸惑いながらそう答えると
恭介はヤッタとばかり手を叩いた。
「じゃ、決まりな。その日1日俺に付き合ってくれよ」
「ええ? どうして?」
「どうしてって・・・お前、誕生日もうすぐだろ」
「えー?! なんで知ってるの?恭介君」
あんずが驚いて声をあげると
恭介はまるでいたずらっ子のように笑った。
「ば~か、言ったろ? お前のコトはなんでも知ってるってな。
・・・それよりどうなんだよ。
付き合うのか付き合えねえのかはっきり言えよ」
「え?・・・うん、いいけど」
「よし、じゃあ決まりだな」
あんずの返事を聞くと、恭介は満足そうにうなづいた。
◇ ◇ ◇
そして日曜日当日―アクセサリーショップにて。
「なあ、あんず。これなんかどうだ?」
「ん~、ちょっと待って。そんなに一度には決められないよ」
鏡の前でにらめっこするあんずは、必死で耳元で格闘していた。
その隣で恭介がいくつものイヤリングを手にしてニヤニヤと笑っている。
その視線に気づいたあんずは憮然とした様子で睨み付けた。
「なによ、恭介君てば」
「え? 何が?」
「笑ってるじゃない」
「え?ああ、そりゃあ・・・お前、不器用だなあって思ってさ」
「そっ、そんなコトわかってるもん。そりゃあ恭介君は器用でしょうよ。
なんたってプラモを作ってるぐらいなんだから」
「そーいう問題じゃないと思うけどなあ」
恭介に「何か買ってやる」と言われて、多少気が引けないこともなかったが、
せっかくなのでイヤリングをプレゼントしてもらうことにした。
それはいいのだが、いかんせん普段あまりおしゃれに無頓着なせいか、
選ぶ以前にうまくイヤリングをつけられないでいた。
しかも、恭介があんずのことをじっと見ているもんだから、
それも気になって集中できない。
「き、恭介君」
「ん?」
「あの・・・あっち向いててくれない?」
「なんで?」
「なんでも」
「じゃあ、いいじゃん」
「いいことないの!見てたって退屈でしょ」
「いや全然。すごく楽しいv」
「ウソ!」
「ホント」
「どこが?」
「あんずの顔」
「・・・・・あのね」
「ウソウソ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・ホントはすごくドキドキしてる」
「え?」
「な~んちゃって」
「恭介くん~~~~?!」
問答のような会話が続いた後、
「ああ、もう、めんどくさ~い!・・・やっぱイヤリング、やめようかなぁ・・・!!」
とうとうあんずは音をあげた。
せっかく大人っぽくおしゃれがしたかったんだけど・・・
とあんずが思っていると、「なんでだよ」と恭介が不満顔で覗き込む。
「だ、だって、手早くつけられないんだもん。
やっぱピアスの方がいいのかなあ・・・
いちいちつけたりはずしたりしなくてもいいし、それに落とす心配ないし・・・」
「やめとけよ」
「え?」
「ピアスはやめとけ」
恭介のその言葉にあんずは首をかしげた。
なんだか意外な気がして。
「どうして?体に悪いから?」
以前TVでピアスホールが原因で金属アレルギーになったとか
キズが化膿して悪化したとかいうようなことを言っていた気がする。
「まあ、それもあるけど」
恭介はあんずのために選んだいくつかのイヤリングの中の一つを
手に取りながら、言った。
「イヤリングの方がいいぜ。
だって不器用な彼女だったら、こうしてつけてやることだってできるだろ?」
そう囁きながら、恭介があんずの耳に触れると
いつのまにか可愛いイヤリングが揺れていた。
「きょ、恭介くん!?」
赤くなりながら慌てて耳に手をやるあんずを見て
恭介は満足そうに笑った。
「お、よく似合うぜv・・・うん。
やっぱイヤリングはつけたり、はずしたりするしぐさがいいんだよなぁ」
「え?」
「なんか、こう・・・女っぽく見えるっていうの?
見てるだけでもけっこうドキドキするもんなんだぜ?」
「そ、そーいうもんなの?」
「そ。だから、イヤリング。
なんだったら俺がいつでもつけてやるからさ。なv」
おねだりするようにニッコリ笑いかけられて、
あんずは真っ赤になりながらもシブシブうなづくコトしか出来なかった。
◇ ◇ ◇
その後、恭介と一緒に映画を見たり食事をしたりして過ごしたわけだが。
まるでデートみたいだ、とあんずは今更ながらにドキドキする。
けれど、心の中にはふと湧きあがった疑問があって。
「あの・・・恭介君」
「ん?」
「今日はありがとね」
「どーいたしまして」
「だけど・・・どうして私にこんなコトをしてくれるの?」
帰り道― あんずは気になっていた疑問をぶつけてみた。
案の定、恭介は怪訝な顔であんずを見る。
「はあ?何を今更・・・お前の誕生日祝いって言っただろ」
「うん、それは分かるんだけど、そうじゃなくて・・・・・
恭介君はたしかアプリコットの試験を手伝うってことで、
私と一緒にいてくれるんでしょ?
なのに、どうしてこんなコトまでしてくれるのかなって思って・・・」
「・・・・・・・」
「あ、言いたくなければ別にいいんだけど」
あんずの言葉に、恭介は目を閉じて何事かを考えているようだった。
が、しばらくして口を開いた。
「お前と一緒にいたかったから・・・かな」
「え?」
あんずが思わず見上げると、
恭介は笑った。
「前に・・・言ったろ?
俺は小さい時からじいさんにずっとお前の話ばかり聞かされていたって。
おかげで俺もずっとずっとアプリコットに会いたいと思うようになってさ。
けど、デビューするまでは許されなくて・・・
そいつが俺と同じ年だと聞いてからなおさら、自分の誕生日が来るたびに強く想ったよ。
一緒に祝うことはできないけれど、
あいつも・・・アプリコットもこの街で俺と同じ時を刻んでいるんだなって。
だから、もしアプリコットに出会うことが出来たら、
俺は一緒に誕生日を過ごしたいとずっと思ってたんだ」
「・・・・・・」
「ま、そんなわけでさ。今改めて考えてみると、
お前を今日連れ回したのは自分のためでもあったんだよな。
・・・あんず、がっかりしたろ?」
恭介の言葉にあんずは首を振った。
「ううん・・・そんなことない。
私だって恭介君と一緒に過ごせて楽しかったもの。
それにむしろ、そう言ってくれて嬉しかった」
「え・・・」
恭介は意外そうに目を見開く。
「だって、恭介君。
私と義理で付き合ってくれたわけじゃなくて、
会えない間もずっと私のことを想ってくれてたんだなって思ったら、
なんかちょっと不思議っていうか・・・ジンときちゃった。
ありがとう、恭介君」
「あんず・・・」
恭介は何かを言いかけようとしたけれど。
「だからさ、また一緒に誕生日のお祝いをしようねv」
と、あんずがにっこり笑い返したので
恭介は一瞬言葉を失い―
そして呆れたように笑った。
(まったくこいつときたら・・・
想像以上の奴だったぜ)
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