こちらは本館HPの長文レヴュー以外の短文のレヴューを整理してみました。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
前置き:こちらは本館にて公開していたものです。
「アンジェリーク・スペシャル」の話で、主役はリモージュです。
初期に書いたもので、あまりにつたないので下げました(汗)
作品のあとがきは本館サイトにて。
(なお、リュミ&リモージュです)
~プレゼント~
筆を置き、ホッと一息ついたところで、自分の部屋をノックする者がいた。
リュミエールは今書き上げたばかりの絵画に慌てて布をかぶせると、
いつものように穏やかな声で返事をした。
「どうぞ」
その声を待っていたかのように、カチャリとドアを開けて入ってきたのは、
地の守護聖ルヴァであった。
「おや、オジャマでしたか?」
「これはルヴァさま。いえ、とんでもない・・・!」
「そうですか?なら、よかった。いえ、たいしたことではないんですよ。
新しいお茶が手に入りましてね。あなたにもどうかと思って・・・」
「それはそれは・・いつもありがとうございます」
しばらく主婦のような会話がはずんでいたが、
ふとルヴァが部屋の隅にある物に目を留めた。
先ほどリュミエールが慌てて隠したモノだ。
「おや~、もしかして・・・完成したんですか?」
「え?」
「ここのところ、お茶の時間にも顔を見せずに熱心に絵を描いていると聞きましたが・・・
見せてはもらえないんでしょうねえ・・・」
ルヴァのそのニコニコとする笑顔に、無言の圧力を感じたが、
それでもリュミエールは負けなかった。
「申し訳ありません、ルヴァさま。人にお見せするようなものでは・・・」
「いえ、いいんですよ~。気にしないで下さいね。気長に待っていますから」
気分を害することなくニコニコとうなづくルヴァに、リュミエールはホッと胸をなでおろす。
これがゼフェルあたりなら、無理やり見ようとするだろうが・・・と思っていると、
すでに立ち去ろうとしていたルヴァが思い出したように振り向いた。
「そうそう、リュミエール」
「はい?」
「アンジェリークが一人で湖の方に行ったそうですよ」
そう言い残し、彼は扉を閉めた。
何気ない言葉だったが、リュミエールを絶句させるに十分な威力を持っていた。
何もかもお見通し・・・
そう思うと、ポポッと顔を赤くするリュミエールであった。
◇ ◇ ◇
リュミエールが湖に足を運ぶと、ルヴァの言ったとおりアンジェリークがいた。
が、しかし・・・様子が少しおかしい。
水辺に座り込み途方にくれている様だった。
「どうか・・したのですか?」
「え?あ、リュミエール様・・・」
振り向いたアンジェリークの瞳には涙が浮かんでいて・・・
思わず、リュミエールは動揺してしまう。
「実は・・・ペンダントの鎖が切れてしまって・・・湖に落ちてしまったんです。
あれはママからもらった大切な物なのに・・・」
(大切な・・・・)
事情を聞いて、リュミエールは何事か考えていたが、ふとにっこりと微笑んだ。
「大丈夫ですよ、アンジェリーク」
そう言って、水辺に立つ彼を、アンジェリークは不思議そうに見つめた。
いったい何を・・・?
しばらくして、リュミエールを包んでいた空気がフワリと揺れたかと思うと、
目の前の湖面がキラキラと輝いていく。
アンジェリークが驚いていると、水の中から何かが飛び出してきて宙に浮き、
静かにリュミエールの手の中へと落ちてきた。
それは-紛れもなく大事なペンダントだった。
「これに・・・間違いないですか?」
「は、はい!!リュミエールさま、ありがとうございます!なんてお礼を言っていいか・・・」
満面の笑みを浮かべて喜ぶアンジェリークを見て、リュミエールもまた共に嬉しかった。
彼女の役に立つ自分がこんなに誇らしく感じるなんて。
これはチャンスかもしれない。いや、地の守護聖の導きというべきか。
そう思い、リュミエールは思い切って口にした。
「アンジェリーク・・・あなたに受け取ってもらいたいものがあるのです・・・」
◇ ◇ ◇
数日後、炎の守護聖であるオスカーはリュミエールの部屋へ入るや、ひどく驚いた。
なんせ、いきなり視界に金髪の少女が出迎えてくれるのだから。
だが、その正体を知って苦笑する。
「なんだ、絵か・・・びっくりさせるぜ」
それは、リュミエールが描いた大きなアンジェリークの絵だった。
「は、それにしても・・・よくまあ、臆面もなくお嬢ちゃんの絵を飾っているもんだ」
臆面もなく多数の女性にクサイセリフを吐いている彼に言われたくなかったが、
その相変わらずの憎まれ口にも、リュミエールは動じなかった。
「ふふ・・・アンジェリークに贈ろうと思ったのですが・・彼女がこう言ってくれたのです・・」
『とても嬉しいです!リュミエールさま。
でも、私の部屋は狭くて・・・せっかくの絵も映えないと思うんです。
だから・・・リュミエールさまのお部屋へ飾っていただけませんか?
そうしたら私・・・何度でもリュミエールさまに会いにいけますから・・v』
あの絵と同じ・・・いや、それ以上の魅力的な笑みを思い浮かべていると、
コンコンと扉をノックする音が聞こえて・・・。
「は、はい!!どうぞ!」
リュミエールは慌てて扉へと向かい、微笑んで出迎える。
「こんにちは、リュミエールさま!」
「いらっしゃい、アンジェリーク」
・・・これからが至福の時間だった。
FIN